トラブルの本質を知る その1 酔っぱらいのケンカ編

ケンカも度を過ぎると、やはり

警察→逮捕・勾留→起訴→裁判→罰金・懲役

のフローチャートが完成することがあります。
大人のケンカは犯罪です。

しかし、殺人や強盗、詐欺、窃盗のようなガチの犯罪以外、世間一般でいうところの裁判は感情がその原因になっていたりします。
感情を露わにして得することって、少ないんです。

典型的なトラブル

日常的なトラブルの典型例に、酔っぱらい同士のケンカがあります。
皆さんもご存知の通り、珍しくありません。
だからこそ、トラブルの本質が垣間見えます。
では、警察24時的に、刑事課の宿直風景を覗いてみましょう。

 

とある警察署の刑事課。
いわゆる大部屋と言われている場所だ。
時計は午前1時を指している。
係長がデスクで書類作成。
主任は昼間の事件の証拠品の写真撮影。
私は大部屋の掃除が終わったところで、これから臨場バッグ内の資器材確認と補充作業だ。
今日は珍しく静かな大部屋だったが、通路の向こうから何やら怒鳴り声が。。。
さっき110番で入ってた駅前ロータリーのケンカかな。
と、そこへ地域の制服さんが血だらけの男の腕を抱えて入ってきた。
地域「あのー、すみません。駅前のケンカです。」
私「はい。そこの1号調べ室に入ってもらっていいですか。ちなみに、相手もいるんですか。」
地域「遅れてきます。PCでこっちに向かってると思います。」

1号調べ室に入った男(酔A)は年齢30代後半、スーツ姿、一見会社員風だ。
口からは血を流しており、傷害事件だなんだと、かなり興奮している様子。もちろん、例に漏れず酔ってもいる。
おそらく相手に殴られたのだろう。
まぁ、取りあえず話を聞かねばなので、手に持っていた指紋採取用のアルミニウム粉末ケースを自席に置くと、備忘録が挟まったバインダーを脇に抱え、1号調べ室へ向かった。

私「どうしました?」
酔A「どうしたもこうしたもねぇよ。見りゃ分かんだろ。殴られたんだよ。」
(ケンカに負けたんだろ。とか余計なことは言ってはいけない。)
私「そうですか。相手は分るんですか。」
酔A「分かるよ。連れてきてよ。ここに。」
私「そうですね。で、原因はなんです?」
酔A「こっちが聞きてえよ。あんた警察だろ?あんたが調べろよ。こっちはただ気持ちよく飲んでただけだよ。」
私「ケガしてるみたいですが、病院行きますか?」
酔A「行くに決まってんじゃん。ぜってぇ許さねえから。訴えっからさ。」
私「・・・」

そうこうしている内に、もう一人、威勢がいいのが大部屋に入ってきた。
声しか分からないが、酔Aより少し若い感じだ。
主任がこっちとは部屋の反対側に位置する3号調べ室に入るように指示している。
隣同士の部屋だと、声が丸聞こえで、ますます二人が興奮してしまうからだ。

15分ほど経ったろうか。
主任が酔Aの調べ室に入ってきた。

主任「何があったんです?」
酔A「お前らバカか?何回も同じ事聞くなよ。殴られたんだよ。今、あいつ来てるだろ?声が聞こえてるよ。俺、あいつ訴えっから。被害届出すからさ。」
主任「そうですか。じゃ、お互い被害届を出してもらうようですねぇ。」

酔Aは目をまんまると見開き、突然、体を前のめりにした。

酔A「何でだよ。被害者、俺だよ。俺。殴られてんだから。見りゃ分かんだろ、血だらけだよ。俺、殴ってねぇよ?あいつのこと。」ただでさえ大きなAの声が更にボリュームアップした。
主任「それは、そうみたいだけど。相手も訴えるってさ。」
酔A「はぁ?ちょっと待ってよ。被害者は俺だっての。なんで俺が訴えられるんだよ。」

酔Aは絶叫している。
まさかの展開に面食らったのか、声は上ずり、のどはカラカラのようだ。

主任「あんた。相手の胸ぐら掴んだよね?Yシャツのボタンが取れたのはその所為だってさ。その時に胸に拳が当たったから痛いんだって。Yシャツも仕立てで高いから弁償させるって張り切ってるよ。」

酔Aの顔から血の気が引くのが分かる。

主任「ただし、あなたはケガをしている。向こうはケガはしていないようだ。これは、傷害事件と暴行事件の可能性が高いね。あなたは傷害事件の被害者だが、暴行事件の被疑者でもある。もちろん傷害と暴行では傷害の方が罪が重いから、二人が法廷で争えば、相手の方が若干重いだろうね。でも、そこまでして訴えて勝負する必要ある?」
酔A「俺は被害者だ・・・」

さっきまでの威勢が嘘のようだ。酔Aはすっかりしょげている。
係長が向こうの方から「二人とも逮捕か?」と主任に聞いている。

酔Aは「えっ!?」と言わんばかりに、あからさまに驚いた表情をしている。
主任は、「今、話聞いてます。」と答えると、酔Aに続ける。

主任「どうする。ごめんなさいする?まだ、2時前だ。これから家に帰ってシャワー浴びて、一眠りして、朝、何事もなかったように会社に出社できるよね。」
酔A「でも・・・」
主任「ウチらはいい。仕事だから。でも、あなたがもしここで逮捕されたら、どうなる?ドラマじゃないんだから明日の朝に帰れないよ。48時間拘束された後、24時間以内に検事が勾留するかどうかを決める。もし、勾留となったら、そこから10日は留置場から出られない。場合によって更に10日の勾留がつく。会社はクビだね。家族はどうなる?」

トラブル回避の決断

数分の沈黙が続いた。

酔A「・・・どうしたらいいですか?」
主任「謝る気があるんだったら、話をしてきてあげるよ。」
酔A「・・・お願いします・・・」
15分後、主任が戻ってきた。
主任「相手が謝るなら、自分も謝るってさ。」
酔A「分かりました・・・」

 

ほんとうに良くある日常風景です。
ですが、絶対に譲らない。謝らない。ということもあります。
あんな奴に頭を下げられるか。ということで、プライドが邪魔をする方もいるのですね。

しかし、よく考えましょう。
裁判で争って、その過程と結果はどうなのか。
そのことに考えを巡らせることを忘れてはなりません。
裁判で幸せになる人は本当に少ないです。
もちろん、裁判は争いを解決する手段として、法治国家には欠かせない機関です。
これは泣き寝入りではありません。
無用の争いは、家族のために、自分の大切な人のために避けられるものであれば、避けるべきだと申し上げてておきたいのです。

そのプライド、これからの人生に比べても価値があるものですか?

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